漁業の現状と養殖の課題
世界の漁業生産量は、この30年間で約2倍になる一方、日本の漁業生産量は約1/2となっています。また、農林水産省の漁業・養殖業生産統計によると、養殖生産が世界では約5割を占める一方、日本は約2割に留まっています。
養殖は「海水面漁業の養殖」と「内水面漁業の養殖(陸上養殖)」の2種類があります。海水面漁業の養殖では、養殖可能な地域が限定されることや、天候・災害、プランクトンの異常繁殖・水温上昇などの自然環境の影響を受けやすいなどといった課題があるとされています。
また、陸上養殖の方式である「かけ流し式(小川や海から水槽に取水し、汚れた水を排水する方式)」においても、自然から常に新しい水を供給するため、水質調整が難しいことや外部環境の影響を受けやすいことや、大量の排水が生じることによる外部環境の汚染も懸念されています。
一方の陸上養殖の方式である「閉鎖循環式(槽の水を浄化して、再び水槽に戻す方式)」では、生育環境の制御が比較的容易な反面、運用には高度な技術が必要なため、設備や運用コストが高いことが課題とされてきました。
ビニールハウス内でのかけ流し式による陸上養殖が一般的である海ぶどう養殖において、比較的安価な閉鎖循環式の陸上養殖システム(閉鎖循環式室内養殖)を構築することで、高品質の海ぶどうの安定的な生産が期待できます。
閉鎖循環式室内養殖の特徴
① LED
海水を平面ではなく立体として考え、LED照射により光が当たる面積効率をあげることで、海ぶどうの成長を促進しています。
② 水温
断熱性の高い建物やリーファコンテナにシリンダー水槽を入れることで、エアコンによる室温および水温管理をしています。
③ 海水
天然の海水のみならず、人工海水を用いた養殖にも成功しています。
④ 波
シリンダー水槽内で波や潮流を再現しています。
⑤ CO2
海水中にCO2を溶解させることで、光合成を促進しています。
⑥ 栄養
海ぶどうが必要な成分・栄養を精密に管理し、天然由来のミネラルの添加による施肥をしています。
閉鎖循環式室内養殖により生産した海ぶどうの特徴
海ぶどうは、食物繊維、カリウム、マグネシウムなどの美容成分をはじめとするミネラルを豊富に含み、低カロリーでプチプチとした食感が特徴です。
また、最近では美容・健康に関する効果について注目されており、美容業界や化粧品業界などにおいても様々な研究が進められています。